・今日のランチ（豚と胡瓜と卵の炒め物、スープ、ごはん、サラダ、コーヒー）

　役所へ住民票を取りに行った。ついでに食堂でゴハン食べようと思ったら、昼の営業は終わってた。
　仕方ないので、近くの中華料理屋でランチを食べる。食器を下げられて、しばらく待ってみたけどコーヒーが出てこない。私の記憶が正しければ、メニューには「コーヒーつき」と書いてあった。でもメニューも下げられてるから分からない。
　おそるおそる立ち上がって、厨房のおばちゃんに声をかけてみた。

「あの、ランチにコーヒーついてるんでしたっけ？」
「ああー、コーヒーねえ」

　おばちゃんの持ち上げたコーヒーサーバーの底のほうに、わずか数ミリだけコーヒーが残ってる。そしておばちゃんは時計を見る。14時20分だ。
　ランチタイムは14:30までだから、もう他に客も来ないのだ、お前が最後の一人なのだ、だから察しろ、と。たぶん、そういうことなのだろう。
　私としても、一杯だけのためにドリップさせるのは申し訳ないような気がする。しかし、しかしだ。私が食べ終わったのは 14:10 ぐらいだった。これだけ待って、「いらないっす」と言うのも、なんか悲しい。五秒ぐらいぐるぐる考えたあとで、自分の立ち居地を決めた。今日の私は、おおらかな中年女性だ。

「あ、その残ってるやつでいいですよ。そんなに飲まないんで」
「あら。ごめんなさいねえ。でもねえ」
「はい？」
「ぬるいのよ。保温、切ってたから」
「いいです、ぬるくて」

　おばちゃんがカップに入れてくれたコーヒーは、ぬるいというより、常温だった。

　そんなに怒ってない。ただ、なんかよく分かんないけど、寂しかったんだ。