Phörpa／Khyentse Norbu
1999年・ブータン = オーストラリア

『渋谷で騒いでる青い集団』の映像をテレビで見るたび、なぜイラっとするのか。それを確認したくなったので、もういっぺん観ることにした。こんな時期に借りられないだろと思ったら、あっさり借りられたので驚いた。

　もう、映画とはほとんど何も関係ない話。

　たまに「そねさんサッカー好きですよね」と尋ねられることがあるのだけれど、私はトリッキーな動きをするドリブラーを見るのが好きなだけで、それほどサッカーは好きじゃない。華麗なパスの面白さ、というのが分からない。だから、ここ数年は特に、どうも趣味に合わないスポーツだなと思ってる。

　で。個人的には、サッカーまで先進国が勝たなくてもいいじゃねえかと思ったりもしてる。

　破れたボールを縫って直してるような、ヒマさえあれば狭い路地裏で練習してるような、そういう「サッカーが好きで好きで仕方ないガキ」「ボロボロのスニーカーしか持ってないガキ」「他に娯楽のないガキ」のいる国に勝ってほしいなあと思う。ちっこくて映りの悪いテレビの前で、可愛いけど汚いガキどもが、わーわー言って喜べるような結果が出てくれたほうが、私としては嬉しい。
　金のかかるスポーツで先進国が勝つのは、そういうもんだよねということであきらめがつくんだけど。サッカーぐらいは、もうサッカーが好きでサッカーが好きでサッカーが好きで、ヒマさえあればボールばかり蹴ってお母さんに叱られてたよというような、汚い路地裏からスタートしたタイプのガキが栄光を掴んでもいいじゃないか。ボール一個で練習できるスポーツぐらい、残してくれてもいいじゃないか。ガキの頃から親の理解も得られてて、いい道具そろえて、留学して、戦略とか学んで育ったような選手ばっかりのチームが勝ち上がってしまうと、なんつうのか、もう夢も希望もねえよなって気分になるんだ、私だって。

　ほかに楽しみが山ほどあるような国が勝たなくてもいいのにって。祭りに参加したけりゃ、青い服で渋谷に集まるより、ラブプラスでもやってりゃいいのにって。そう思う。はい、ここに非国民がいますよ。