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映画と食べ物の備忘録
from 2009-09-09 to 2011-07-24 (maybe)
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・適当スープ (ソーセージ、タマネギ、人参、じゃがいも、トマトジュース、チーズ角切り)
・トースト (バター、はちみつ)
・マンデリン


 私は、自分がナスを食べられるようになった瞬間を、まるで昨日のことのように覚えている。はっきりと。

 当時、幼稚園児だった私は、社宅に住んでいた。その社宅の中で、「ナス嫌いの子供がナスを食べられるようになるスープ」というのがブームになった。そして私の母も、それを作って私に食べさせようとした。

 だけど子供の私は、そのブームに決して乗りたくなかった。

 私の住んでいた社宅というのは、非常に大きな集合団地になっていた。その団地の敷地内にはグラウンドがあり、大きな体育館があり、アイススケートのリンクが二つあった。
 幼稚園の園児はほとんどその社宅の子供だけだった。
 というより、幼稚園の帽子についてる園章は、その会社の社章をアレンジしたものだった。いま考えると、あれは社宅の中の幼稚園だったのかもしれない。(ちなみに私は、その幼稚園で問題行動を起こしたため大変なことになったのだが、その話はとりあえず置いておく)。
 要するに、みんなお父さんが○○で働いているという世界の中で生活していたわけだ。正月やら七夕やらクリスマスやら盆踊りやらのイベントも、すべて社内のイベントスペースやグラウンドで行われていた。お習字を習う子も、剣道を習う子も、アイスホッケーをする子も、みんな『○○さんのお父さん』『○○さんのお母さん』に教わっている。すべてが社宅の中で済まされている。
 私は子供心にも、それが非常に狭くて陰気な世界であるような気がしてならなかった。変に感受性が強くて、プライドが高くて、面倒くさい幼稚園児だったのだ。

 そういうクソガキにとって、「社宅で流行してるものを食べる」というのは、たいへん屈辱的なことだった。
 まして近所のガキどもと同じタイミングで、同じものを食べられるようになるなんて。そんなのは、おそろしく格好悪いことだと思った。私だけはナス嫌いのままでいい。そう心に決めていた。しかし、そのスープはあまりにも美味しそうな匂いを放っていた。
 やはり私は屈してしまった。
 スープは旨かった。そして、そのスープをきっかけにして、ナス料理はなんでも食べられるようになった。周りの子供たちと全く同じように。
 それ以降は、ナスが大好物になった。ナスは旨い。食べられるようになってよかった。結果としてはオッケーだ。でもやっぱり個人的には、「ナスを食べられるようになった日」というのは、うんと悔しくて恥ずかしい思い出となっている。

 で、そのときのスープは、ベーコンと小さい角切りのナスとタマネギ、あと幾つかの野菜を炒めて、コンソメスープで伸ばし、角切りのホテルチーズ(当時、チーズといえばこれ以外の選択肢がなかった)とトマトを仕上げに加えたような感じのものだった。これも、もうレシピが分からない。どうやっても再現することができない。

 でも、いま食べたらそんなに美味しくないのだろうという気がしてる。
 スープっていったらコーンスープしかなかった時代だからこそ、美味しくてたまらなかったんだろう、たぶん。
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